「連休中は業務が止まるし、サイバー攻撃のリスクも少し下がるのでは?」
そのように考えていませんか。
しかし実際には、ゴールデンウィークやお盆、シルバーウィーク、年末年始などの長期休暇こそ、サイバー攻撃による被害が拡大しやすい時期です。
本記事では、連休中にサイバー攻撃の被害が広がりやすい理由をはじめ、最近の事例、注意すべき主な攻撃の種類、そして休暇前に実施しておきたい対策について、わかりやすく整理して解説します。
なぜ長期休暇中はサイバー攻撃の被害が広がりやすいのか
長期休暇そのものがサイバー攻撃を引き起こすわけではありません。
問題なのは、休暇中には平常時とは異なる環境が生まれやすいことです。
たとえば、担当者の不在、端末の持ち出し、通常とは異なる勤務体制などが重なることで、インシデントの発見から初動対応までに時間がかかるおそれがあります。こうした状況では、被害の把握や封じ込めが遅れ、結果として被害が拡大しやすくなります。
さらに、攻撃者はこのような“防御側の隙”を狙っています。
実際に年末年始には、交通、金融、通信など、社会的影響の大きい分野に対してDDoS攻撃による障害が相次いだ事例もありました。利用者が多く、かつ企業の監視体制が手薄になりやすいタイミングは、攻撃者にとって格好の標的になり得るのです。
最近起きた事例
長期休暇中やその前後には、実際にさまざまな被害が発生しています。
ここでは、今年のお盆休み期間中に公表された事例を紹介します。
| 事例1 |
|---|
| 国内の通販系事業者で、第三者による不正アクセスが発生し、約23万件の顧客情報(氏名、住所、電話、メールアドレス、パスワードのハッシュ値など)が外部に漏えいしたおそれがあると公表された。 |
| 事例2 |
|---|
| 国内の小売・エンタメ関連事業者で、子会社が利用する一部の社内ネットワークでランサムウェア被害が確認され、店舗運営や各種サービスに影響が生じた。一部店舗では臨時休業や営業時間変更が発生し、決済、買い取り、ポイント、ECにも支障が出たほか、顧客や取引先の情報が漏えいした可能性があると公表された。 |
| 事例3 |
|---|
| 国内の地域系通信・放送関連事業者で、ヘルプデスクで使用していたメールアドレスへの不正アクセスが発生し、メールに含まれる個人情報が閲覧または取得された可能性があると発表した。特定の期間中に該当のメールアドレスと送受信した顧客および関係者のメール情報が、第三者に取得された可能性が判明した。 |
連休中に注意したい主なサイバー攻撃
長期休暇中は、特に次のような攻撃やリスクに注意が必要です。
| 主なサイバー攻撃・リスク | 概要 | 連休中に注意が必要な理由 |
|---|---|---|
| 不正アクセス・アカウントの不正利用 | VPN、クラウド、メール、Webシステムなどへ不正にログインされる | 深夜・休日の不審なアクセスがあっても、担当者不在で発見が遅れやすい |
| ランサムウェア・マルウェア感染 | フィッシングメールや脆弱性の悪用などで侵入し、端末やサーバーに被害を与える | 休暇中に感染すると、発見まで時間がかかり、被害が広がりやすい |
| フィッシングメール・不審なURL | 偽の配送通知や請求書メールなどで、偽サイトや不正ファイルに誘導される | 休暇明けはメールがたまりやすく、確認不足で開封・入力してしまいやすい |
| DDoS攻撃 | 大量の通信を送りつけ、サービスを遅延・停止させる | 利用者が多い時期や、止まると困る時期を狙われやすい |
| 端末の紛失・盗難・情報漏えい | PCやスマホ、USBメモリの紛失・盗難から情報が漏れる | 社外への持ち出しが増え、データや認証情報の流出につながるおそれがある |
休暇前に行うべき対策
長期休暇前に重要なのは、事故を完全に防ぐことだけではありません。
万が一異常が発生した場合に、誰が、どのように対応するのかを事前に決めておくことが重要です。管理者と利用者それぞれの役割を整理し、必要な準備を進めましょう。
管理者向け
1. 緊急連絡体制の確認
不正アクセス、ランサムウェア感染、端末の紛失など、不測の事態が発生した場合に備えて、緊急連絡体制や対応手順が明確になっているか確認しましょう。
情報システム部門だけでなく、必要に応じて経営層、法務、広報、委託先企業なども含め、誰が誰に、どの手段で連絡するのかを整理しておくことが重要です。あわせて、連絡フローが現在の組織体制に沿っているか、各担当者の電話番号やメールアドレスに変更がないかも確認しておきましょう。
2. 社内ネットワークへの機器接続ルールの確認と遵守
ウイルスに感染したパソコンや外部記憶媒体などを社内ネットワークに接続すると、組織内にマルウェアを拡散させてしまうおそれがあります。
長期休暇中にメンテナンス作業や機器の入れ替えなどで社内ネットワークへ機器を接続する予定がある場合は、事前に機器接続ルールを確認し、適切に運用されるよう徹底しましょう。
3. 使用しない機器の電源OFF
長期休暇中に使用しないサーバー、端末、ネットワーク機器などがある場合は、業務への影響を確認したうえで、不要な機器の電源をOFFにすることを検討しましょう。
ただし、監視機器、バックアップ機器、外部向けサービス、継続稼働が必要なシステムまで停止しないよう、対象機器を事前に十分確認する必要があります。
4. OS・ソフトウェア・セキュリティ製品の更新
OS、業務ソフト、Webシステム、VPN機器、ルーター、セキュリティ製品などについて、最新の修正プログラムや更新プログラムが適用されているか確認しましょう。
特に、インターネットに公開している機器やシステムは、既知の脆弱性を放置しないことが重要です。更新後は、正常に動作することも確認しておきましょう。
5. アカウントとアクセス権限の見直し
利用されていないアカウント、不要な管理者権限、使われていないリモートアクセス経路が残っていないかを確認しましょう。
あわせて、VPN、クラウドサービス、メールなど外部から利用できるサービスについては、多要素認証の設定状況も見直しておくことが重要です。
6. バックアップの取得・確認
ランサムウェア感染や障害発生時に備えて、重要なデータやシステムのバックアップ状況を確認しましょう。ランサムウェア感染や障害発生時に備えて、重要なデータやシステムのバックアップ状況を確認しましょう。
バックアップが取得されているかだけでなく、必要なデータが含まれているか、復元可能か、また本番環境と同時に影響を受けない構成になっているかまで確認しておくことが大切です。
7. 社員への注意喚起
休暇前には、フィッシングメール、不審な添付ファイル、偽のログイン画面、SMSやSNS経由の不審なURLなどについて、社員へ具体的に注意喚起を行いましょう。
送信者名だけで信用しないこと、メール内リンクからログインしないこと、不審な添付ファイルを開かないこと、異常を見つけた際の報告先を確認しておくことなど、実際の行動に結びつく形で周知することが重要です。
利用者向け
1. 機器やデータの持ち出しルールの確認と遵守
長期休暇中に、社外での対応が必要となるパソコン、スマートフォン、USBメモリ、書類、データなどを持ち出す場合は、組織のルールを事前に確認し、必ず遵守しましょう。
持ち出しの許可手続き、保存できる情報の範囲、暗号化の要否、紛失時の連絡先などをあらかじめ確認しておくことが大切です。
2. 使用しない機器の電源OFF
長期休暇中に使用しないパソコンや周辺機器は、電源をOFFにしておきましょう。
不要な機器の稼働を減らすことで、トラブルや不正利用のリスクを抑えることにつながります。
3. 不審なメールやURLに注意する
休暇前後は、配送通知や請求書、システム通知などを装ったフィッシングメールが届くことがあります。
メール本文のリンクから安易にログインしない、不審な添付ファイルを開かない、少しでも怪しいと感じた場合は担当部署へ相談する、といった基本的な行動を徹底しましょう。
休暇明けに行うべき対策
長期休暇明けは、休暇中に発生していた不審なアクセスや、持ち出していた端末を経由した不正プログラム感染などが表面化しやすいタイミングです。
そのため、業務を通常どおり再開する前に、管理者と利用者それぞれが必要な確認を行うことが重要です。
管理者向け
1. 各種ログの確認
VPN、ファイアウォール、監視装置、サーバーなどのログやアラートを確認し、休暇中に不審なアクセスや異常な挙動が発生していないかを点検しましょう。
特に、深夜・休日のログイン、外部からの不審な通信、通常とは異なる権限変更などがないかを確認することが重要です。不審なログが記録されていた場合は、ログを保全したうえで、速やかに詳細調査や必要な対処を行いましょう。
2. 機器・ソフトウェアの脆弱性対策
休暇中に公表された脆弱性情報がないかを確認し、必要に応じてセキュリティパッチの適用やバージョンアップを行いましょう。
特に、VPN、サーバー、パソコン、防犯カメラなど、外部ネットワークからアクセスされる可能性がある機器は優先的に確認する必要があります。すぐに対応が難しい場合でも、アクセス制限などのリスク緩和策を講じることが重要です。
3. アクセス権限・認証設定の見直し
不要なアカウントが残っていないか、アクセス権限が過剰になっていないかを確認し、本人認証を強化しましょう。
パスワードが単純でないかを点検するとともに、可能であればパスキーなど、フィッシング耐性のある多要素認証の導入も検討すべきです。また、外部ネットワークからアクセス可能な機器やサービスは、本当に必要なものに限定することが大切です。
4. バックアップの確認
ランサムウェア被害や障害発生時に備え、重要データのバックアップがネットワークから切り離された状態で保管されているかを確認しましょう。
あわせて、バックアップから正常に復元できるかを一部でもテストしておくと、万が一の際の復旧対応に役立ちます。近年は、ランサムウェアによりバックアップまで暗号化される被害も発生しているため、保管方法の見直しも重要です。
利用者向け
1. 電源を落としていた機器の更新確認
休暇中に電源を落としていたパソコンなどは、起動後すぐに利用を始めるのではなく、まず不正プログラム対策ソフトの定義ファイルが最新の状態になっているかを確認し、必要に応じて更新してから使用を開始しましょう。
2. 持ち出した機器の安全確認
休暇中に社外へ持ち出していたパソコンやスマートフォンなどについては、不正プログラムに感染していないかを確認することが重要です。
最新の状態に更新した不正プログラム対策ソフトなどを用いて点検し、少しでも異常がある場合は担当部署へ報告しましょう。
3. 不審なメールやなりすましへの注意
休暇明けは未読メールが溜まりやすく、フィッシングメールやなりすましメールに気付きにくくなります。
不審な添付ファイルを開いたり、リンク先にアクセスしたりしないことはもちろん、上司や取引先を装ったメールで金銭要求や緊急対応を求められた場合は、電話など別の手段で本人確認を行うことが重要です。生成AIを悪用した巧妙ななりすましにも注意しましょう。
まとめ
長期休暇中は、担当者の不在、端末の持ち出し、通常と異なる勤務体制、休暇明けのメール急増など、平常時とは異なる条件が重なることで、サイバー攻撃の被害が広がりやすくなります。攻撃そのものを完全にゼロにすることは難しくても、休暇前の準備、休暇中の安全な利用、休暇明けの確認を一連の流れとして捉えることで、被害の発生や拡大を抑えやすくなります。
「連休だから大丈夫」ではなく、「連休だからこそ備える」という意識が大切です。休み明けに異常へ気づいたときには、すでに被害が広がっているかもしれません。そうならないためにも、連休前の今こそ、自社の連絡体制、公開システム、アカウント管理、バックアップ、そして社員への周知を見直しておきましょう。
また、長期休暇前には、公開システムやネットワーク機器に脆弱性が残っていないかを確認しておくことも重要です。
弊社では脆弱性診断を実施しておりますので、第三者による定期的なセキュリティ点検をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
【参考文献】
令和8年度版 長期休暇に向けて、セキュリティは万全ですか?/大阪府警本部
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