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ドキュメントレビューのポイント vol.2 〜レビューの準備〜

ドキュメントレビューのポイント vol.2 〜レビューの準備〜

システム開発の現場で作成される様々なドキュメントは、レビューを受けることでプロジェクトとしての品質を担保しています。

設計フェーズで作成される要件定義書・基本設計書・詳細設計書、テストフェーズで作成されるテスト計画書・テストケース・テスト結果報告書、リリース前に作成されるリリース手順書・操作マニュアル等々、作成されたドキュメントはすべてレビューにかけられます。

レビューの際に起こりがちな間違いは別記事ドキュメントレビューのポイント vol.1 〜レビューの間違い〜でご紹介しましたが、このような間違いを起こさないためにも、レビューの技法や進め方を理解し、正しく進めていきたいものです。

レビュー技法

レビューにも複数の種類がありますが、ここではシステム開発の現場でよく用いられる2つの技法「テクニカルレビュー」「ウォークスルー」をご紹介します。

レビュー技法 内容
テクニカルレビュー 特定のソフトウェアプロダクトを評価して、ソフトウェアを利用しようとしている関係者の意図にプロダクトが合致しているかどうかを判断することを目的とする。承認済の仕様や標準に対する不一致の識別が目標となる。(IEEE1028「Software Reviews and Audits」で定義されている)
ウォークスルー テクニカルレビューのように形式を張らず、どちらかというとドキュメント作成者が他有識者に相談(内容の発表)をするような形式で展開されるレビュー技法。ドキュメント作成者のスキルアップや、レビュー参加者間での情報共有が目的となる場合もある。

テクニカルレビューの4つのステップ

レビューは下図の通り4つのステップで実行されます。

テクニカルレビューの4つのステップ

各フェーズ(要件定義・基本設計・詳細設計、等)で、作成されたドキュメントのレビューを実行します。場合によっては、フェーズごとにウォークスルーや簡易レビューを数回、実施する場合もあります。

また、レビューの各ステップを取り仕切るエンジニアを「リーダー」と呼び、レビュアーとは区別します。実際には、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダー、チームリーダーが担うことが多いと思います。

レビューの準備

レビューの4つのステップのうち、最初のステップである「1.レビューの準備」は、下図のように5つのタスクから構成されます。

1. 問題種別の選定

最初のタスクは、レビューでどのような問題を検出すべきなのか、検討することです。このとき、「ボトムアップ」「トップダウン」の2段階のアプローチで検討を進めていきます。

アプローチ 内容
ボトムアップ 過去プロジェクトや類似プロジェクトでのレビュー時に指摘された事項を参照し、今回のプロジェクトにおけるレビューで検出すべき問題がどのようなものか検討する。
トップダウン システムに対する要求事項やプロジェクトの背景などから類推して検出すべき問題がどのようなものか検討する。
2. シナリオの作成

検出すべき問題の検討結果を基にして、ドキュメントのどこをどのように調べていくのか、具体化させてシナリオとしてまとめます。シナリオをブラッシュアップしていく過程で、検出すべき問題の漏れに気付いたり、レビュアーに求められるスキルレベルの検討ができます。

3. レビュー実施検討

レビューを一度きりと定めるのではなく、テクニカルレビューよりも一段階カジュアルなウォークスルーや簡易レビューを数回実施し、テクニカルレビューの前にドキュメントの品質を高めておくことも重要です。そのため、レビューのリーダーは、作成されるドキュメントごとに、簡易なレビューをどのタイミングで何回実施するか検討しておく必要があります。

4. レビュアーの選定

作成したシナリオを基に、レビュー対象の分野への知見の有無やスキルレベルを確認して、レビュアーを選定します。選定したレビュアーそれぞれに、シナリオを割り当てていきます。レビュアーは、プロジェクト規模の大小に関わらず、5名程度が良いとされています。あまりに多くのレビュアーがいると、レビューに時間がかかり効率的ではありません。

5. ドキュメント配布・告知

レビュー会議の前に、ドキュメント作成者にレビュー対象のドキュメントを提出させ、レビュアーに配布し、レビュー会議開催の告知をします。仮にドキュメントの作成が間に合っていない場合でも、途中のドキュメントを提出させます。プロジェクトの進捗とスケジュール次第ですが、未完成の状態でもレビューを実施する場合があります。

まとめ

レビューをステップに沿って正しく進めていくためには、準備段階におけるタスクを理解しておく必要があります。効率的で確実なレビューを実施するために、準備に余念のないようにしたいですね。

■ドキュメントレビューに関するその他の解説記事

ドキュメントレビューのポイント vol.1 〜レビューの間違い〜
ドキュメントレビューのポイント vol.2 〜レビューの準備〜 【本記事】
ドキュメントレビューのポイント vol.3 〜レビュアーの準備〜
ドキュメントレビューのポイント vol.4 〜ドキュメントレビューの実施〜

【参考文献】
間違いだらけの設計レビュー [改訂版] 日経BP社
ソフトウェア開発へのSWEBOKの適用 オーム社