前回の『テスト自動化導入のポイントVol.1 〜どのテストを自動化すべきか〜』では、自動化に向いているテスト、向いていないテストと、その事例についてご紹介しました。
ここでは、テストツールを導入する際に気をつけなければいけないことについてご紹介します。
テストツール導入の落とし穴
明確な戦略の欠如
テストツールを導入するにあたり最も大きな落とし穴に、そのテストツールがテストの全般的な成功にどのように役立つかをよく考えずに導入してしまうことが挙げられます。先にテストツールを選択し、それからそのツールに合わせてテスト手順を変更していくことは、良いテスト戦略とは言えません。
また、多くのテストツールのベンダーは自分たちのツールが最も有効活用できるテスト戦略を推奨してきますが、重要なのは自分たちのテスト戦略を推進するために役立つテストツールを選択することです。ただし、ある機能についてテストプロセスが何も整っていない場合は例外で、先にツールを選択してからそれを軸にテスト環境を整えることもあります。
つまり、先にテスト戦略を立ててテストプロセスを決めてから、そのプロセスに合ったテストツールを選択することが重要です。
不適切な作業の自動化
テストに限らず、ついつい見落としがちなのが「不適切な作業を自動化してしまう」ということです。自動化に向いているのは、同じ手順で繰り返し実行するテストです。一度しか実行する予定のないテストケースや、変更・改修が多い箇所では自動化のためにかけたコストの方が大きくなってしまい、見返りが合わなくなってしまいます。
詳しくは、『テスト自動化導入のポイントVol.1 〜どのテストを自動化すべきか〜』をご覧ください。
不適切なツールの選択
前述した、不適切な作業の自動化の前には、実は不適切なテストツールが選択されていることが多くあります。この場合、ツールの使用する要件をまとめて、それらに優先度を付けることが重要です。すべての要件を満たすツールは存在しないため、同様のツールを複数使用することが必要になる場合もあります。特にテスト対象となるソフトウェアを実行する環境が複数ある場合には、その可能性が高くなります。
不適切なベンダーの選択
残念ながら、全てのベンダーが同じ標準を満たしているとは限りません。そのため、重要なのはテストチームが気持ちよく一緒に働ける相手を選択することです。いくら多機能なツールを使用していたとしても、ベンダーの応答が悪かったり、ツールのトレーニングやコンサルティングが不十分の場合、ツールの性能を十分に発揮することはできません。
「時間/リソース」の過小見積もり
テストツールを導入するために必要な時間のスケジューリングが甘かったり、リソースの見積もりが少なすぎる場合、結局そのツールを導入できずに別な使い慣れたツールを使うことになることがよくあります。その場合、そのツールが再び使われることはほとんどなく、ムダになってしまうことが多くあります。これを防ぐためには、テストツールの導入には多くの時間がかかるということを、あらかじめ関係者に理解してもらうことが重要です。
不適切、または独特なテスト環境
テストチームの中には、使用できる体制が整っていないのにツールを導入してしまう場合があります。もしくは、テストツールを効果的に利用したくても、テスト環境が不適切なこともあります。ここで言う環境とは、データベースやファイル構造、ソースコードやその管理、構成管理などを指します。テストツールの導入を成功させるためには、開発環境とテスト環境を整える必要があります。
不適切なタイミング
あらゆる物事においてタイミングとはとても重要な要素のひとつであり、それはテストにおいても例外ではありません。例えば、これまでで最大のソフトウェアリリースのまっただ中で、大規模なテストツールの導入やテスト自動化の実施を試みることは、適切な戦略とは言えません。テストツールを導入するタイミングとして「いつが最善なのか?」は、一概には言えません。
例えば、2000年問題(西暦2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた年問題)が発覚したときには、多くの企業が新たにテストツールを導入しました。このように、テストツールの導入には外的な要因が加わってくる場合もあるため、導入のタイミングはうまく見定める必要があります。
まとめ
ここまで、テストツールを導入する際に気をつけなければいけないことについてご紹介しました。テストツールは導入することがゴールではなく、そのツールによってテストが効率化されるところまでがゴールです。そのためには多くの注意点があるということを認識しなくてはなりません。
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【参考文献】:
『体系的ソフトウェアテスト入門』