システム開発において欠かすことの出来ないテスト。テストする対象範囲やチェック観点に応じて、単体テスト・結合テスト・総合テストなどいくつかの工程(フェーズ)に分けて実施していきます。
テストはどの工程においても、原則として「計画とコントロール」「分析と設計」「実装と実行」「終了」というプロセスで進めていきます。
テストプロセス
このうち、「計画とコントロール」「分析と設計」については「テストプロセス vol.1〜テストの準備〜」で、「実装と実行」については「テストプロセス vol.2〜テストの実行〜」で、「終了」については「テストプロセス vol.3〜テストの終了〜」で、それぞれご説明してきました。
各テスト工程において作成されるドキュメントを総称して「テストドキュメント」と言います。
本記事では、テストドキュメントの種類をご紹介していきます。
テストドキュメントを整備する必要性
テストドキュメントは、テスト工程ではなくテストプロセスごとに作成していく必要があります。
その理由は2つあります。
理由1. テスト工程間で品質の差異をなくすため
テストは、複数名のエンジニアによって実施されます。テストドキュメントがあれば、対応要員間の認識や前後のテスト工程間における齟齬の発生を防げます。
理由2. テスト対象の品質状況を見える化するため
テストの計画段階において定義されたテスト方針と、実際に実施されているテストの進め方が合致しているか、テストの進捗は予定通りか、など、あらかじめ定められた内容を確認しながら状況を明確に把握できます。
テストドキュメントの種類と内容
1. テスト全体計画書
テスト工程の全体を見通した計画を取りまとめ、テストの全体像を表すドキュメントです。
2. テスト計画書(個別)
テストの計画段階で検討される、テストの「スコープ(範囲)」「リスク要素」「目的」「アプローチ・戦略」「手段」「実施レベル(粒度・深度)」「評価方法」「開始と終了の基準」などの項目をまとめたドキュメントです。
3. テスト設計仕様書
テストの目的や対象機能、実施方法や実施環境などを具体的に示したドキュメントです。
4. テストケース
テストを実施するのに必要となる情報を記述したドキュメントです。テストケースの管理手法については、こちらをご覧ください。
5. テストログ
テストケースに基づいて実施したテストの結果を記録するドキュメントです。多くの場合、テスト結果を◯/✕もしくはOK/NGの形式で記録します。
6. 不具合報告書
テスト結果が✕(NG)だった場合、検出した事象を不具合報告書にまとめます。作成された不具合報告書を元に開発者が事象を調査し、プログラムを修正します。
7. 進捗管理表
テストの進捗状況や品質状況を管理するためのドキュメントです。
8. テストサマリレポート
テストログや不具合報告書の内容を分析し、その内容をプロジェクトのステークホルダに報告するために作成するドキュメントです。
まとめ
システム開発には多人数のプロジェクトメンバーが関わっています。プロジェクトメンバー間で認識の齟齬が生まれてしまうと、開発の進捗に遅延の影響が出たり、品質が低下したりする遠因となりかねません。
開発するプロダクトの品質を多層で確認するために実施するテスト作業だからこそ、認識の齟齬を生じさせないためにも、テストドキュメントを作成してプロジェクトメンバーが同じ認識のもとで作業を進めていけるようにすることが重要です。
テストドキュメントは最終的に、納品物として取りまとめ、クライアントに提出することもあります。ですから、納品義務の有無に関わらず、ドキュメントを日頃から整理しておきましょう。そうすれば、納品準備の段階になってあたふたとドキュメント整理に追われる、ということもなくなります。
テストドキュメントに限った話ではありませんが、プロジェクトの円滑な進行のためにも、ドキュメントを日常的にしっかりと作成・整理する習慣をつけていきましょう。
【参考文献】:
この1冊でよくわかるソフトウェアテストの教科書 〜品質を決定づけるテスト工程の基本と実践〜 SB Creative