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テストチームの運営Vol.1 ~独立したテストチームの必要性とメリット・デメリット~

テストチームの運営Vol.1 ~独立したテストチームの必要性とメリット・デメリット~

テストチームの運営を行う際は、どんな点に注意し、どのように進めるべきかを何回かに分けて考えていきます。初回のテーマは、独立したテストチームの必要性です。その特徴、メリット・デメリットから、独立したテストチームの効果的な運営につながるヒントが見えてきます。

独立したテストチームを作る必要性

多くの産業でなんらかのソフトウェアが利用されている現代、その役割の拡大とともに求められる機能や安全性のレベルは上がり続けています。こうしたニーズに応え、質の高い製品を提供するのに不可欠なのが、テストの精度の向上です。

独立したテストチームの作成は、テストの精度向上において効果的かつ現実的な手法であり、現代のソフトウェア開発における必要性の高さが提唱されています。

自身による制作物のミスは自分では見つけにくいものです。新聞や書籍の編集における校正者に代表されるように、ミスをチェックするための専任者の配置は多彩な業種で行われている効果の高い手法であり、システム開発においても例外ではありません。

テストチームを独立するメリット・デメリット

テストチームの作成により、具体的に得られるメリットにはどのようなものがあるのかを見てみましょう。なお、メリットの反面、デメリットもゼロではありません。双方をしっかりと把握することで、メリットを活かし、デメリットを補うテストチームの運営に役立てましょう。

独立したテストチームを作るメリット

■先入観がないため、フラットな目線で評価できる

自身で作成している開発者には先入観があるのは避けられません。先入観がないことは、テストの先任者を設ける最大のメリットと言えるでしょう。ミスの発見はもちろん、使用感についてもよりユーザーに近い目線で判断できます。「テストをする」ことを目的としたチームのため、「ミスを見つけよう」とする意識の高さも期待できます。

■しがらみがなく自由に判断できる

開発者のチーム内でチェックも兼ねる場合、同じチーム、目的を持ち作業している仲間のミスを指摘しにくい、使い勝手への不満を述べにくいなどのしがらみが生じることがあります。独立したテストチームであればその心配がありません。

■開発と並行してテストが進められる

開発と並行し、より早い段階からテストが行えます。早期から開発者以外の視点が入ることで設計上の不具合などを見つけやすく、製品の質の向上が期待できます。また、バグの発見のタイミングも早まり、さかのぼって修正するより手間が軽減できるのもメリットです。

独立したテストチームのデメリット

■開発に関わる詳細な情報が得にくい

開発者との距離があるテストチームの場合、情報が不足する危険性があります。独立したテストチームを運営する際は、開発者との情報共有の手段をしっかりと確保することで対処できます。

■開発担当者の責任感が薄れる

テストチームと開発者の関係性によっては、「ミスを減らそう」という意識や品質への責任感が薄れてしまうことがあります。開発チームが関わるテストも設ける、開発チームのリーダーと連携を図るなどの対応で回避したい問題です。

■チーム間に対立が生じる危険性

開発者、テスト担当者それぞれに業務・意見があるため、利害の衝突から対立が生じる恐れがあります。責任分担を明確にする、コミュニケーション手段を構築しておくなど事前の対処でリスクを回避しましょう。

独立したテストチームの形態は一つではない

独立したテストチームと言っても、その形はさまざまです。例えば社内の人間で作られた場合と、顧客から派遣されてきた場合とでは、もたらす影響や生じるメリットはかなり違ってきます。独立したテストチームの具体的な例を見てみましょう

  • プロジェクト内のメンバーから選抜されたチーム
  • 専門の部署などプロジェクト外の社員で構築されたチーム
  • 顧客から派遣されたメンバーによるチーム
  • 分野ごとのスペシャリストによるチーム
  • 協力会社など外部組織のテストチーム

例えば、プロジェクト内のメンバーから選抜された場合、開発者との情報共有やコミュニケーションがしやすい反面、先入観の面では完全にフラットとは言えません。専門の部署や外部組織は、その逆の立場です。また顧客から派遣されたメンバーであれば製品への根本的な要求に詳しい、分野ごとのスペシャリストであれば専門的な知見があるなど、各々に特徴があります。 製品やテストの内容など、求める条件に適したテストチームを使うことは効果的なテストにつながります。

まとめ

テストチームの必要性、メリット・デメリットを知ることで、テストにより最適なチームを採用できるのはもちろん、起こりうるデメリットへの事前の対策も容易になり、円滑なテストチーム運営への貢献が期待できます。

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テストチームの運営Vol.3 ~失敗しないテストチームの作り方を考える~
テストチームの運営Vol.4 ~テストにかかるコストの把握と見積もりの勘所~


【参考文献】:

『ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation 第3版』

【参考URL】:
https://webrage.jp/techblog/w_shaped_model/,(参照 2017年5月12日) http://gihyo.jp/news/report/01/softwaretest_seminar/0005,(参照 2017年5月12日)